患者に対する医師の説明(いわゆるインフォームドコンセント)

平成17年 新人研修医師に対する教育課題(愛媛県立中央病院

形式;ロールプレイ
場所:院内説明用控え室
出演者:[患者(P)][その家族(F)][医師(D)][看護婦(N)]

[患者(P)][その家族(F)]: あわてて室内に入ってくる
[家族(F)]:「遅れましてすみません。約束の時間だったのに父が遅いもんだから遅れてしもて。1分も遅れてすみません。どうも。はよ、おとうさん入り!
[看護婦(N)]:「ほな、せんせ呼んで来ますからね。」
[患者(P)],[家族(F)]: 待つ。
[患者(P)]: 「喉が渇いた」と言い、[家族(F)]がボトルのお茶を飲ませる。
[看護婦(N)]:「もう!、ここでは飲食はせんといてください。もう!」
[患者(P)],[家族(F)]: 40分待つ。べつにイラつくこともなく待っている。

[医師(D)]ばたばたとスリッパの音高く入ってくる。
[医師(D)]:「待った? 忙しいてなあ。ほな、そこに座って。あのなあ。おじいちゃんは心カテ検査で冠動脈の狭窄がわかったんよ。それで次の段階の治療せないかんのでなあ。それには承諾書ももらわないかんので、来てもろたんよ。」
シャーカステンにフィルムをかける。
「あのねえ、ご覧になって分かるように、冠動脈の狭窄病変があるんです。
3枝にわたって病変が存在するんですけど、前下行枝のLADの1枝は75%の狭窄病変があるのでPTCAの適応と思います。 わかりますか。おじいちゃん。」
[家族(F)]:「おのう、父は耳が遠いのでよう分からんのです。私が耳元で大きい声で言いますから」
[患者(P)]: うなずく
[医師(D)]:「ほな、よろしいか。 それでねえ、PTCA言うものをせないかんのですよ。PTCAっていうのはねえ経皮的冠動脈拡大術っていうもんでねえ、もっっとわかりやすく説明するとねえ、 径皮的にですねえ、冠動脈をねえ、拡大することなんですよ。わかりましたか。」
[家族(F)]:「おとうさん、わかった?」  「あのなあ、PTいうてなあ径皮的いうもんをするんやて。」
[患者(P)]: うなづく
[医師(D)]:「おじいちゃん、わかっとんかいな。あのなあ、細い管になあ、フーセン入れてふくらますんです。そしたら狭窄部が拡張するんです。」
[家族(F)]:「おとうさん、フーセンするんやて。わかった?細い管のなあフーセンなんよ。」
[患者(P)]: うなづく。
[医師(D)]:「その危険率ですけれども合併症として発生率は万人に一人の確率で死亡する程度です。これが多いか少ないかは個人的な見解によりますけど。」
[家族(F)]:「わかったおとうさん。10万人死ぬんやて。それが確定やとせんセが言うとんよ。」
[患者(P)]: うなずく
[医師(D)]:「それで同意書がないと治療できませんからここに名前書いてはんこ押してください。 いやなら止めてもいいんです。でもこのまま放って置いたら心臓の血管がつまってしまっていつ死亡するかもしれません。死ぬ前にはこの前のようなひどい痛みが起きるのです。だからPTCAする必要があるんです。」
[家族(F)]:「また胸が痛くなって、死ぬのはいややわねえ、おとうさん。 名前、ここに書くんですか、はんこはここですか。はい、捺印しました。」
[医師(D)]:「ほな、これで。」
医師は部屋を出て行く。
[看護婦(N)]:「せんせのお話すみましたか? 承諾書はこれですね、それじゃあとでまたお渡ししますからね。 先生のお話、わかりましたか?」
[家族(F)]:「ええ、詳しいに聞かせてもらいました。ちょっと難しいてよう分からんかったけど。センセも熱心に話してくれました。レントゲンも見せてくれたし。 何言いよったか忘れてしもた。死亡が75%っていよったかいな。おとうさんもわかったか?」
[患者(P)]:「いや、わしゃ、耳、遠いでようわからんかった。 でも、せんせ、なにやら言いよったけんなあ。判もおしたし、なあ。 センセも忙しいと言いよったけんあまり聞いても時間とるし。なあ。 わしらなんぼ聞いてもわからんけに。」

(控え室で)
[看護婦(N)]:「先生、さっきの人、心カテのムンテラようわからんかったッて言ってましたよ。」
[医師(D)]:「そんなことあるかい。わしは詳しいに長い時間かけてコロナリーの所見も説明して、合併症までみな話したぞ。家族も納得してはんこ押したがな。 解らんかったら、その場で聞いたらええのに、あとで看護婦にごちゃごちゃ言わても困るわ。
じいさんも耳、遠い言うとったからなあ。こんな場合には家族がちゃんとフォローしてくれなああかんわ。
英語で言うてもわからんからちゃんと日本語で解釈して説明したんよ。
素人は知識ないからなあ。医学用語みんないちから説明せないかんし、時間かかるわ。忙しいのに。
まあ、でも承諾書とっといたから、なにがあっても大丈夫よ。 この前、承諾書ないのにIVHいれてトラブって困ったやつおったでえ。 なにごとも承諾書よ。近頃コワイでえ、テレビなんかで患者は皆よう知っとるからなあ。 マスコミがなんでも医者が悪いように報道するからなあ。 説明しておかんからあんなになるんよ。いわゆる説明不足ゆうもんよ。
ムンテラいうもんは何事も多めにゆうとく方がええんよ。問題でて来ても大丈夫よ。 これがテクニックゆうもんよ。わしら長年の経験から言えるけどな。
ははは、、、、。」

設問: 以上のような患者への説明で医師および看護師の言動で明らかに誤りである点を5箇所挙げよ。

指導: 患者への説明は如何に患者が理解したかがもっとも重要なポイントである。医師が独断で独りよがりの説明になってはいけない。 常に相手の反応をみて、時には理解度のチェックをして話を繰り返し行うことが肝要である。  専門的な用語はさける、早口でしゃべらない、図を描く、なども重要な点である。  承諾書があるといっても医療訴訟において、これがすべて医療行為の免罪符になるものではないことを注意すべきである。  インフォームドコンセントの要点は、いかに患者が医師の説明を理解したか、、、を医師が理解することである。

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